ちょっと前まで、旗色が悪かったフェミニズムが、カードが裏返ったように大注目されている日本。女性たちが物事に対し「ヘンだ」と思い、そこで放った言葉が、SNSを通して実際に社会に影響を与えていくという現実の流れはこれからも続いていくでしょう。
さて、日本の女性の言動を社会的に縛ってきた空気とモラルを「わきまえ」という言葉で、森元オリパラ会長が言挙げしてくれましたが、クラシック音楽界は歴史的に見ても、バリバリの男性ホモソーシャル社会。クララ・シューマンやアルマ・マーラーなどの女性作曲家は、まずもって、曲自体よりも、夫の存在ありきの知名度です。
ヴァイオリン、ピアノ、そして声楽(まあ、当たり前です)の分野では、ずいぶんと才能のある演奏家が活躍していますが、作曲家や指揮者は数少ない。最近では、シモーネ・ヤング、マリン・オールソップなどの女性指揮者が注目されたり、現代音楽の世界ではポーリン・オリヴェロスのような奇才や、ウンスク・チンのような才能ある作曲家が登場したりしていますが、本当にこれから、という感じ。
というわけで、今回は「爆クラ」の中でも初テーマ、クラシック音楽とフェミニズムを扱う、題しまして「クラシック音楽界のわきまえない女たち」。ゲストは敬愛する青柳いづみこさん。團伊玖磨、中村紘子とクラシック音楽関係者は名文書家が多いのですが、彼女は別格。
著作『無邪気と悪魔は紙一重』(文春文庫)は、小説やオペラの主人公に現れる「宿命の女(ファムファタル)」を徹底分析した快著ですが、女性から見ると「なんだかなぁ」のこの存在はもちろんのこと、わきまえなかった、いや、わきまえたからこそ活躍できたクラシック業界の女性たちを紹介しつつ、コンクールの審査員なども歴任する青柳さんからみた、クラシック音楽界と女性の問題点、そして、「プッチーニは自己犠牲献身女が大好き」などの作曲家が描くところの女性キャラ、タイプ診断なども語り合う所存。
トーク後のDJタイムは、ヴァイオリニストの石上真由子さん。2019年に日本コロムビアの「Opus One」レーベルよりCDをリリースし、いまクラシック音楽界で大活躍中の石上さんは、実は医学と音楽の二足を極めた究極の才女。選曲とパフォーマンスに大いにご期待あれ!
■ゲスト:青柳いづみこ(あおやぎいづみこ)
ピアニスト・文筆家。安川加壽子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。東京芸術大学大学院博士課程修了。学術博士。演奏と文筆を両立させる希有な存在として注目を集め、著作は30点、CDは20点。文化庁芸術祭賞、吉田秀和賞、講談社エッセイ賞など受賞多数。近刊は『阿佐ヶ谷アタリデ大ザケノンダ」(平凡社)、CDは高橋悠治とのコラボレーションで『物語』(ALM)。女性論としては、ファム・ファタルを扱った『無邪気と悪魔は紙一重』(文春文庫)がある。現在、岩波書店『図書』に「響きあう芸術 パリのサロンの物語」連載中。
■ゲストDJ:石上真由子(いしがみまゆこ)
5歳からヴァイオリンを始め、8歳の時にローマ国際音楽祭に招待される。 高校2年生で第77回日本音楽コンクール第2位、併せて聴衆賞及びE・ナカミチ賞受賞。第7回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽部門第1位、全部門最優秀賞及びコンチェルトデビュー賞受賞。第5回宗次エンジェルヴァイオリンコンクール第4位受賞。第14回チェコ音楽コンクールヴァイオリン部門第1位受賞。2017年9月バルトークコンクールにて特別賞受賞。 NHK-FM名曲リサイタルやリサイタル・ノヴァに出演。NHKテレビではドキュメンタリーや、東京交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団との共演も放送された。 東京交響楽団、京都市交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、ブラショフ国立交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京ニューシティ管弦楽団、セントラル愛知交響楽団など、国内外で多数のオーケストラと共演。 アメリカ・ヨーロッパ各地の音楽祭・演奏会に出演。 ソロ活動と共に、京都市交響楽団や大阪フィルハーモニー交響楽団、日本センチュリー交響楽団等に客演首席として出演するほか、長岡京室内アンサンブル、アンサンブル九条山のメンバーとしても活躍している。 2018年1月、京都を中心に室内楽のコンサートを行うEnsemble Amoibeシリーズを立ち上げた。 Music Dialogueアーティスト。CHANEL Pygmalion Days室内楽アーティスト。京都コンサートホール第1期登録アーティスト。 2019年1月、日本コロムビアの新レーベルOpus OneよりCD「ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ」をリリース。
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