クラシック音楽を爆音で聴く「爆クラ」。ゲストにお迎えするのは、映画を中心に、音楽、小説など、まさに岩井ワールドと称される唯一無比の表現を発信し続けている岩井俊二さん。音楽そのものが視覚化されたような独自の映像美を誇る才人に、クラシック音楽のサウンドはどう捉えられているのか。または、岩井ワールドに参加可能なクラシック音楽とは、どういうものなのか?
教養としてのクラシックではなく、クラブ耳を持つ人にこそ体験してほしい、この爆音音浴。生演奏がデフォルトだけれど、録音とオーディオという現代のテクノが入ってこその、音と脳と身体とのセッションを堪能して下さい。
たとえば、音楽室から聞こえてくるピアノ、という状況があります。放課後、クラブ活動の人が早く来て練習しているか、誰かが遊んで弾いているのか。日本人の多くが無意識にも体験し,思い起こすに、何か甘酸っぱく、不思議な時空の放課後のシーンですが、岩井俊二さんは、そういう奇蹟のような一瞬をすくい上げることにとてつもない才能を持った人。
「映画も音楽もまず、ひとりの作家を徹底的に咀嚼したことがなく、かといってあるジャンルをダイジェスト的に追いかけたこともない。じゃあ一体いままで何をしてきたのかというと、やはりどこかで同じ質感のものを偏執的にコレクションしてきたのは事実です。アスペルガー症に偏執的収集癖というのがあるそうですが、それに近いです」というのが、今回のテーマ決めにおいて寄せていただいたテキスト。
ならば、彼の「音楽収集癖」をキーワードに、小学校時代から彼のその収集癖コレクションに収蔵されてきた音楽をひもとき、その「味わい」と同じ果実を、クラシックの葡萄畑からとってきて、みんなで味わってみる、という企てができあがりました。(なぜ葡萄畑なのかは、当日のお楽しみ!)
テレビの深夜ドラマ時代には、シューベルトのアヴェ・マリアを使った「マリア」、ヴィヴァルディの四季・冬を使った「雪の王様」などクラシック音楽を使った作品も多いのですが、「音楽になる映画」または「映画になる音楽」といった、映像と音楽の関係も解き明かしていきたいと思います。
ゲスト
岩井俊二(映画監督・映像作家・脚本家・音楽家)
高校生の時に映像制作に興味を持ち、大学時代に自主映画を撮り始める。91年TVドラマ「見知らぬ我が子」の演出でプロデビュー。93年、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」はTVドラマだったにもかかわらず、日本映画監督協会の新人賞を受賞する。同作は95年に劇場で公開された。94年の「Undo」はベルリン国際映画祭でNETPAC賞を受賞し、「Love Letter」(95)は韓国をはじめアジアで大ヒット。以降、「スワロウテイル」(96)や、インターネット上で展開した自作の小説を映画化した「リリィ・シュシュのすべて」(01)、ウェブ配信された短編をもとにした「花とアリス」(04)などを発表し、国内外で高く評価される。近年はオムニバス映画「ニューヨーク、アイラブユー」(10)の一編や「Vampire」など、海外でも製作を行っている。「市川崑物語」(06)、「friends after 3.11 劇場版」(12)といったドキュメンタリー作品も手がける。プロデューサーとしても活躍。近作は、2004年に公開された実写映画「花とアリス」の前日譚となる物語で、初の長編アニメーション監督に挑んだ『花とアリス殺人事件』。
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