「エディリーヌの恋は6月には終わると踏んでいた。しかしアロウは海で死に、彼女はアロウの代わりにアロウの見るはずだった宇宙を見に行くことにしたのだった・・・」
萩尾望都「6月の声」より
梅雨の6月は世界中が水の空気に包まれて、非常にロマンチックな感覚に陥ります。そんな空気の中、またも、ポストクラブ仕様の”名曲喫茶”を目指し、クラシックの名曲たちを大音量のサウンドシステムで愉しむ、「爆音クラシック」の第二弾が、6月7日(火)に開催されます。
題して「爆音クラシック 第二夜 ~ラヴェル 和声の魔界へようこそ」
爆音でのピアノ、というのは、もちろん現実での視聴ではあり得ないのですが、私は個人的にはちょっと経験があって、小さい頃の私のお気に入りの場所のひとつが、作曲中の父のグランドピアノの下だったんですね。その爆音直下で、私はよく昼寝をしていたのですが、半覚醒のその不思議な時間の心地よさは、今でもはっきりと残っているのです。
クラシック音楽でお水系と言えば、もちろん、銀座方面ではなく、ドビュッシー、ラヴェルのフランス近代、印象派ですが(私見)、今回はあえて後者。水質で言うと、硬質度が断然高くてとミネラル分がコントレックス方面を選んでみました。
ラヴェル弾きは、楽譜に記された厳格な”決めごと”を要求されます。これ、あの長旋律の美メロが激甘に転じるのを抑制した、作曲家のツンデレの現れだと私は思っているのですが、天才プレイヤーたちは、その”余地のなさ”にあえて、大胆な解釈に挑んできます。
サンソン・フランソワに、マルタ・アルゲリッチ、そして、ミケランジェリというピアニズムのマエストロたちの妙技の中に、扉を開ける、アナザーワールド=魔界感をおたのしみください。
視聴をどうぞ! サンソン・フランソワ「Gaspard de la Nuit - Scarbo」
ゲストトークのお相手は、m-form主宰で、建築、音楽、数学のフィールドで多角的に制作活動を行い、建築、インスタレーション制作活動を行っている岩岡哲夫さん。新宿三丁目の妖しいクラシックバー「キヌギヌ」でたまたまお酒を飲んでいたところ、カウンター横で披露される、その卓抜たるラヴェル見識に舌を巻いて、今回お呼びしてしまった次第。
映像(動くレコジャケとしての)は、ご本人、クラシックに限らず、もの凄くよーく音楽を聴いていらっしゃって、これまた、私とプログレ談義で酒場にて盛り上がりがちの伊藤桂司さん。
教養としてのクラシックではなく、ドミューンに親しんだクラブ耳を持つ人にこそ体験してほしい、この爆音音浴。生演奏がデフォルトだけれど、録音とオーディオという現代のテクノが入ってこその、音と脳と身体とのセッションです。
ゲスト
岩岡哲夫
m-form主宰。'78年、兵庫県生まれ。東京大学大学院数理科学研究科修了。同大学院美術研究科建築専攻博士課程満期退学。学生時代より、建築、音楽、数学のフィールドで多角的に制作活動を行う。2007年より、土屋真と共同で建築、インスタレーション制作活動を行っている。聴く建築(2006/ユニオン文化財団調査研究)等。 小学生のときにアルゲリッチの「水の戯れ」を聴き衝撃を受ける。ラヴェルフェチは大学以降も続き、室内楽やピアノ協奏曲(両手、左手)も齧り、ラヴェル愛好家を自負。
映像(レコジャケとしての)
伊藤桂司
'58年、東京生まれ。活動はグラフィック・ビジュアルワーク・アートディレクション・映像等多岐に渡り、ohana、スチャダラパー、東京ザヴィヌルバッハ、クラムボン、オレンジペコーなどのジャケットやビデオクリップも手掛けた。作品集には『FUTURE DAYS』(青心社)など多数。京都造形芸術大学教授。UFG代表。
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