さて、101回目のディケイド越えの爆クラのゲストは、ヒップホップ/ラッパーの雄、練マザーファッカーのD.Oをゲストに迎えます。この、あり得ない顔あわせで、101回目の新生・爆クラはスタートを切ります。
といいつつ、D.O氏との顔合わせはこれが2回目。つい最近の7月1日に、雑誌サイゾー主宰で出所&活動再開記念トークショーをしたばかり。この対談、ワタクシにとって非常に興味深いものでして、終了直後、その場で場クラの出演をお願いしました。
さて、D.O氏と言えば、「〜メーン?」「~ってハナシ!」という独特の言い回しと語り口のユーモア感覚、三つ編みに総タトゥーというチカーノもびっくりのコワモテぶりで、才覚あるお笑いタレントの中で話題になり、テレビでも注目されていた矢先の逮捕&収監劇。 実はそれ以前に園子温監督の映画『TOKYO TRIBE』で彼の存在を知ったワタクシは、そのフロウのワンアンドオンリーの魅力に心をつかまれていて、爆クラゲストにと、知り合いの編集者に打診したところ、「実現は出所後ですかね」となってしまった経緯があるのです。 文楽の義太夫節、能の謡のように物語る音楽は日本の伝統芸能に色濃く残っていますが、D.O氏のラップは、非常にそこに近い感触があり、京都祇園は「波木井」のおとうさんの都々逸のごとくの節回し(「LUV SONG」参照のこと)は、どうしてもそのルーツに日本の伝承芸を感じてしまう。ちなみに、彼の独特の鼻にかかったような高音のフロウは、三代目桂三木助に似てもいます。 さて、クラシックが、歌曲とオペラは別として、歌詞という言語にたよらない音楽だとすると、ラップミュージックの軸は言葉にあります。 韻を踏むこと、リズム、意味と発音の両方を考慮した言葉の選び方、そして、言葉とバックトラックの音響が結びついたときに発生する情感や爆発力による表現効果はもの凄く、ポップスでは今なお最も熱く、若者を中心に支持を得ているジャンルでもあります。 また、文学、詩作の方からは、吉増剛造のような現代詩のポエトリーリーディング、政治、社会的内容が中心であるスポークンワードという表現手段は、この激動の世相を受けて、現在注目を浴びてもいます。 「音楽はひとつだ」と一般的には信じられていますが、音楽を知れば知るほど、ジャンルの壁は厚い。ヒップホップ/ラップミュージックの魅力である、ストリート感覚、センス、抵抗、パワー、バイブス、グルーヴ、フロウ、イル、ドープといった要素は、クラシック音楽の中にスタイルは違えども同種のものが存在するのか否か?!(ちなみに「クラシックにおけるグルーヴ問題」は、指揮者、バーヴォ・ヤルヴィの回ほかでよく取り沙汰されてもいます) また、自伝本『悪党の詩』に書かれたように、子供時代から誰よりも目立つ不良であり、ルールに縛られない生き方を実現してきたD.O氏に、クラシック音楽きっての「悪」をぶつけてみる所存。(クラオタのみなさんはすぐにあの作曲家を思い浮かべるでしょうねぇ) そして、ワタクシの中で密かに温めているアイディア「クラシックの曲自体をトラックにして、ラッパーが表現することは可能なのか? 問題」についても、氏のお知恵を拝借したいと思っているのです。
■ゲスト:D.O(ラッパー、練マザファッカー)
特徴的なハイトーン・ボイスと粘りつくようなラップなどで異彩を放つハードコア・ラッパー。KAMINARI-KAZOKU.のメンバーとしての活動を皮切りに、数々の客演をこなし、2006年、初のソロアルバム『JUST HUSTLIN’ NOW』をリリース。自身の結成したクルー:練マザファッカーはTV番組『リンカーン』(TBS系)にも抜擢され、お茶の間で人気を博し、「DISる」や「メ~ン」を世間に定着させた。映画『TOKYO TRIBE』出演や自身で原案した映画『HO ~欲望の爪痕~』のプロデュースなど活動は多岐にわたる。2014年、EP『TOKYO RAP CARTEL』を9SARI GROUPよりリリース。2019年には自伝『悪党の詩』を出版。ヒップホップを軸にマンガ、映画、グルメ、アジア情勢、ビットコイン、タトゥー、プロレス、お笑いなどなど、話題豊富なトークでTV、ラジオ、ネットを賑わす。
■セットリスト
1. 「月に憑かれたピエロ」作品21 第1部:「月に酔い」/アルノルト・シェーンベルク/坂入健司郎(1884/2020)
2. 「ミのための詩」/オリヴィエ・メシアン/ピエール・ブーレーズ、クリーヴランド管弦楽団(1936/1997)
3. 『The cave –洞窟–』より第1幕 第7曲「Who is Ismael?」/スティーヴ・ライヒ/(1995)
4. 『ポーギーとベス』第1幕 1「イントロダクション:サマータイム」/ジョージ・ガーシュウィン/サイモン・ラトル、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、グライドボーン合唱団(1935/1989)
5. ヴァイオリン組曲「黒人街から From the Black Belt」 /ウィリアム・グラント・スティル/ジークフリート・ランダウ、ウェストチェスター交響楽団(1926/2013)
6. 「チン・チン(乾杯)」(J. デュクロによるトランペットと管弦楽編)/アストル・ピアソラ/サッシャ・ゲッツェル、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリ(1978/2021)
7. 「悪党の詩 REMIX」/D.O × Red Eye(2022)
8. 組曲『中国の不思議な役人」作品19 Sz.73〜最終部分/バルトーク・ベーラ/若杉弘、東京都交響楽団(1924/2014)※爆クラCDに収録
9. ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35より第4楽章 アレグロ・コン・ブリオ/ドミートリイ・ショスタコーヴィチ/リッカルド・シャイー、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1933/1990)
10. 『ロメオとジュリエット』第2組曲 作品64ter 第1曲「モンタギュー家とキャピュレット家」/セルゲイ・プロコフィエフ/クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1937/1996)
11. 『新マタイ受難曲-永遠の水(Water Passion After St. matthew)』第1部「荒れ野の誘惑」/タン・ドゥン(1999/2000)
12. コントラバス協奏曲 I. Allegretto moderato/大澤壽人/山田和樹、日本フィルハーモニー交響楽団、佐野央子(1934)
13. 『遠い呼び声の彼方へ!』/武満徹/パーヴォ・ヤルヴィ、NHK交響楽団、諏訪内晶子(1980/2017)
14. In C/テリー・ライリー/ピアノ・サーカス(1967/1990)
15. Four Organs/スティーブ・ライヒ/ジョン・ギブソン、フィリップ・グラス(1970/1995)
16. 「ダブル・コンチェルト」ピアノ、パーカッション、アンサンブルのための/ウンスク・チン/アンサンブル・アンテルコンタンポラン(2002)
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