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ツバメ・ノヴェレッテ

コトリンゴ×首藤康之×オーケストラ・アンサンブル金沢で送る、新時代のダンス交響詩

2021年12月19日(日)

岐阜県高山市・高山市民文化会館大ホール

 行ってきましたよ、高山! コトリンゴさん作曲の舞踏交響詩「ツバメ・ノヴェレッテ」世界初演(12月19日 高山市民文化会館大ホール)に立ち会ってまいりました。

 思い起こせば10月中旬のこと。それは湯山玲子さんからのFacebookメッセージの着信から始まりました。

 湯山さんは2011年から「クラシック音楽をクラブ的な爆音で楽しむ」をコンセプトとした「爆クラ」というおもしろイベントの仕掛け人。最初は六本木にあった「音楽実験室 新世界」というバーで開催されていました。私は2011年8月に爆クラ第4回「アントン・ブルックナーを聴く」に出演。壇上からはバッファロー・ドーターのムーグ山本さんや中原昌也くん、作家の島田雅彦さんなんかも見えてドキドキしながらブルックナーの巨大な大伽藍を爆音で鳴らしまくったことを今でもよく覚えています。あ、あとここで著名DJの長谷川賢司くんがバーテンダーやっててびっくりしたっけな(笑)。
 で、爆クラはその後も場所を変えながら気がつくともう10年。すごいことですよこれは。現在は渋谷PARCOにあるネット・プログラムSUPERDOMMUNE(ex DOMMUNE)に場所を移してほぼ月一ペースで「爆クラ」が開催されています。現代美術家にしてDOMMUNE主宰の宇川直宏をも上回る湯山玲子のパワー恐るべし。

 そんな湯山さんからある日Facebookメッセージ着信。
「11月3日にDOMMUNEで爆クラやります。出演はコトリンゴさん。彼女の2013年のアルバム『ツバメ・ノヴェレッテ』をオーケストラ公演するのでそれについて話します。で、トーク後にクラシックDJやらない?」

 私、DOMMUNEにはこれまでも何度かご縁があり、コメンテイターとしてクリエイション・レーベルとかKLFとかDSDとかの回に出演したことがあります。実は今回の爆クラDOMMUNEの1ヶ月前にも、「ele-king presents マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界」という、ロック史上に残る孤高の名作『LOVELESS』を30年前に作り上げたシューゲイザー・バンドについて語る回に出たばかり。このときも実はコメンテイターとしてだけじゃなくてDJもやらない? と言われたのですが、これまでDOMMUNEに出演した多くの超弩級豪華DJ陣のことを考えると無理! 絶対無理!って腰が引けてしまって断ってしまったのです。結局その日はSUGIURUMNくんが素晴らしいシューゲイザーDJ(前半マイブラ縛り、後半マッドチェスターMIX)を披露してくれて、それがもうほんとに素晴らしくてやっぱり出なくてよかったなと思った次第。ちなみに楽しすぎて終電逃しましたけど(笑)。

 そんな流れがあったわけですが、クラシックDJと言われて一瞬考え込みました。DOMMUNE/爆クラにおいては、少し前に今人気急上昇中の指揮者、坂入健司郎さんの神DJ回のことが頭をよぎったのです。あれは素晴らしかった。現役指揮者が編み上げた新しい音の綴れ織りに心底唸らされたことを今でもよく覚えています。
 しかしながら、あのときの坂入さんの音楽操作テクニックと、コトリンゴさんに対して私が抱いていたイメージ(ピアノ/フランス音楽/浮遊感……という私の中での彼女の勝手なイメージ)から、何かおもしろそうなことができそうな気がしたので、お引き受けしました。
 実際、そのときの選曲が彼女のイメージにあっていたかどうかはわからないですが……でも、そんなに大きく外れたものではなかったのではないかなと勝手に思っていますが、聴かれた方はどう思われたでしょうか。当日のセットリストをあげておきますね。

1 スティーヴ・ライヒ:エレクトリック・カウンターポイントから 第3楽章<早く>/パット・メセニー
2 ドビュッシー:沈める寺(シラー・リミックス)/エレーヌ・グリモー
3 ポーター・リックス・ミックス(ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」に因む)/ポーター・リックス
4 クラブド・トゥ・デス(暗闇のヴァリエーション/エルガーの「エニグマ変奏曲」に因む)/ロブ・ドゥガン
5 ロベルト・シューマン/ヴォルフガング・フォイト
6 クララ・ヴィーク/ヴォルフガング・フォイト
7 アレインガング/ヴォルフガング・フォイト
8 ゲドゥルド(忍耐)/ヴォルフガング・フォイト
9 ゲドゥルド(DJコッツェ・リミックス)/ヴォルフガング・フォイト
10  ボレロ(ラヴェルに因む)/ワレイカ
11  ミューズたちの語らい(ハガー・リワーク/ジャン・フィリップ・ラモーに因む)/ヴィキングル・オラフソン
12  坂本のドビュッシー(ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」に因む)/坂本龍一
13  ノーザン・ライト5(ブルックナーの「交響曲第7番ホ長調/第2楽章アダージョに因む)/サン・エレクトリック
14  フランツ・シューベルト/クラフトワーク

 さて、とは言いつつも文化の日のSUPERDOMMUNEでおふたりのトークを聴くまでは、正直「打ち込み中心で作られたコトリンゴさんの『ツバメ・ノヴェレッテ』を、舞踏交響詩としてダンサー、オペラ歌手を含むフルオーケストラで公演を行う」ということがどういうことなのか、あまりよくわかっていなかったのも事実です。今はなき赤坂BLITZで2008年の夏、坂本龍一プロデュースで行われた「ロハスクラシック・コンサート2008」に、僕が制作担当していたピアニスト、小菅優とともに出演していたコトリンゴさんを聴いたのが、僕のコトリンゴさん初体験でした。ピアノを弾きながら歌うその時のコトリンゴさんはとても印象的でした。ですので、オリジナルの『ツバメ・ノヴェレッテ』を含むcommmonsレーベルからの作品はもちろんのこと、ハイレゾ配信されている近年のサウンドトラック作品も積極的に耳にしていたつもりです。彼女がアメリカのジャズの名門バークリー音楽大学出身で、ピアノとDTMで音楽を作っているということもその過程で知りました。
 そんな彼女の、8年前の作品にあの湯山玲子さんが惚れ込んで、オーケストラ作品として再構築されて高山市で初演を行う……これはどういうことなんだろうか。

 湯山さんは僕のような凡人には思いもつかないような突飛なアイデアをアイデアのままで終わらせず、確実に実現させてきた才人です。例えばテクノDJジェフ・ミルズがオーケストラとエレクトロニクスのために書き下ろした『Planets』を、アンドレア・バッティストーニ指揮する東京フィルによるライヴ演奏を東京(オーチャードホール)と大阪(フェスティバルホール)でプロデュースしてしまったのには心底驚嘆させられたものです。クラシックの世界だけの人、ポップスの世界だけの人、どちらもこういう仕掛けはできません。かく言う私もそうなのですが、どちらの世界にも興味があってある程度足を突っ込んでいる人は少なくはない。でも、こういう恐ろしくマンパワーもお金もかかることを多くの人を巻き込んで実現させてしまう能力を持った人はほとんどいません。湯山さんはまさにそういう人。
 そして今回の『舞踏交響詩 ツバメ・ノヴェレッテ』。最初のアイデアとして湯山さんのひらめきがなかったら実現しなかったであろうということを考えると、ジェフ・ミルズの『Planets』を下敷きとしつつ、さらにジャンプアップした湯山玲子プロデューサーの面目躍如といった結論に達せざるを得ないイベントでした。

 僕が高山に入ったのは公演前日。東京からバスで高山に向かったのですが、途中から路面に雪が積もりだし、高山市に入ったら雪は止んでいたもののあたりは積雪で真っ白でした。聴くところによれば前々日までは雪はなかったとのことですが、前日は猛吹雪だったようで、あっという間にそこはリアル雪国になっていたというわけです。まさか天気までもが「ツバメ・ノヴェレッテ」を演出してくれているのか、とすら思えたりもしつつ、念のためレインブーツを履いてきたのでなんとかホールまでたどり着きましたが、なんとちょうどリハーサルが終わったところ。バスが雪で遅延したため、リハーサルは間に合わず……無念。その日は高山ラーメンで暖を取り、早めに就寝。

 翌日は朝からけっこうな雪模様。雪に彩られた古都を散策しながら有名な陣屋前朝市で朝食を取り、ホールに向かいました。着いたときにはすでに1曲目のバーバー「カプリコーン協奏曲」のリハーサルが始まっていました。このオープニングの選曲だけでプロデューサーの攻めた姿勢が伺えます。この曲を実演で取り上げるのは指揮者(鈴木織衛氏)もオーケストラ(オーケストラアンサンブル金沢)も初めてだと言いますが、実際のところこの私も実演を聴くのは初めてですよ(笑)。弦楽五部にフルート、オーボエ、トランペットがひとりずつソリストとして対峙する合奏協奏曲スタイルで演奏会が始まるわけですが、ソリストは大変だったでしょうね。特にトランペットは超絶技巧の嵐のような曲ですし。すばらしくブラボーでした!

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 次はディーリアスの「春初めてのカッコウの声を聴いて」。これも小管弦楽(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット各1、ホルン2、弦楽五部)による演奏で。誰もが知っているわけではないけど、世界中にコアなファンが多い作曲家、ディーリアスの名品ですね。それに続いてドビュッシーの「小組曲」で前半が終わるのですが、まずポイントはこの前半の湯山プロデューサーの選曲の妙。こんなことを言ったら大変失礼ですが、東京とか大阪ならいざ知らず、ここ高山でのオーケストラコンサートでこの選曲、普通じゃ考えつかないですよ(笑)。だってここにはベートーヴェンもモーツァルトもブラームスもバッハもない……そんなふうに思ってしまう小市民な私でしたが、そこは本人曰く……「後半の<新曲>への耳慣らし」。
 これぞ湯山節ですよ(笑)。

 続いていよいよ初めて聴く舞踏交響詩「ツバメ・ノヴェレッテ」です。
 オーケストラが舞台に登場してくるまで僕はこの「ツバメ・ノヴェレッテ」がどういう編成なのか知らなかったのですが、舞台に上がってきたプレイヤーが席につき、全体像を見たとき、これはもしかして……と気がついたことがあります。

「ツバメ・ノヴェレッテ」のオーケストラの編成は以下のとおり。1回見た記憶で書いているのでもしかしたら違っているかもしれませんがご容赦を。

・フルート2(2ndはピッコロ持ち替え)
・オーボエ2(2ndはイングリッシュホルン持ち替え……もしかしたらずっとイングリッシュホルンだけ吹いていたかもしれない)
・クラリネット2
・ファゴット2
・ホルン2
・トランペット2
・トロンボーン2
・バスチューバ1
・ティンパニ
・打楽器3(マリンバ、シロフォン、グロッケンシュピール、バスドラム、シンバル、銅羅、小さなドラムセット)
・ピアノ
・チェレスタ
・ハープ
・弦楽五部(86442)

 この編成は、前半最後のドビュッシー「小組曲」(アンリ・ビュッセル編)のオーケストラに似ているのです。2本ずつの管楽器、ハープ、ティンパニはほぼ同じですし、多様多彩な打楽器が使われているところも似ている。そして「ツバメ・ノヴェレッテ」ではこのドビュッシーのオーケストラにピアノ、チェレスタ(指揮者の前にDJブースのように置かれていました)が加わります。管楽器セクションにはドビュッシーにはなかった低音金管楽器(トロンボーン、バスチューバ)までもが動員されていました。ちなみにトロンボーンですが、通常オーケストラの編成においては他の管楽器が2管編成の場合でも3本でセクションを組むのが普通ですが、今回の場合は2本(テノール1、バス1)。それからトランペットがドイツ式のロータリートランペットだったのは意外でした。そういえばトランペットは(通常はピストン式の楽器で吹く)ドビュッシーもロータリーで吹かれてましたね。

 このオーケストラに、ザ・レジェンドという3人の男性オペラ歌手とダンサーの首藤康之さんが加わり、舞踏交響詩としての「ツバメ・ノヴェレッテ」が始まります。
 以下は聴きながらとったメモから。

1.  Umi/Preamble……チェレスタとコーラングレがあやなす美しいメロディと対照的に重厚な管楽器のハーモニー。コーダにやってくるザ・レジェンドのヴォーカル・ハーモニーにはすでにクライマックス感あり。
2.  ツバメが飛ぶ歌……それまでピアノを弾いていたコトリンゴが歌う。シロフォンが大活躍。
3.  port town……オリジナル・アルバムには入っていない? 室内楽的に始まり、トランペットとトロンボーンが細かい技巧的なパッセージを聴かせる。
4.  Let me awake……フルート、チェレスタ、打楽器をバックにコトリンゴが着席して歌詞を朗読。歌詞は少し改変があったかも。その後コトリンゴはピアノに移動してメロディを奏でる。
5.  Interlude-Rainy Day……オリジナルと近いアレンジの間奏曲。ピアノと木管、特にフルートとピッコロが印象的。
6.  テーラー兄弟」。ザ・レジェンドが登場し、愉しいアンサンブルを披露。オーケストラの管弦楽器は沈黙し、鍵盤打楽器とチェレスタが彩りを添える。
7.  Lost Shoes……ダンサーが赤い靴を持って登場。ハープと弦合奏。コンサートマスター伝田氏によるヴァイオリン・ソロが切ない。
8.  冬を待つうた……全員登場。終始3拍子だがどんどん表情が変わる。シロフォンのアルベジオと弦楽合奏に始まり、木管や金管も加わって最初のクライマックス。一度静まり、ダンサーは何かを見つけた感じで歩いていく。机に上り目隠し。手を挙げ両手を天に広げる。コーラスのハーモニー加わる。「気がついたらここで生きる覚悟ができてたよ」という歌詞とともにダンサーは机の上で横を向き、天を仰ぎ、目を隠すが手を退けて微笑。舞台を軽やかに舞う。ジムノペディを思わせるリズムに変わり、ピアノ・ソロへ。ダンサーが大きく手を広げると音楽はワルツ(ウィンナ・ワルツではなくロシアふうのワルツ)に変わる。最後はダンサーの謎めいた微笑と解決しない和音(ツバメは冬を越せずに死んでいくということの表現?)による壮大なアポテオーズで幕。

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 管弦楽化された「ツバメ・ノヴェレッテ」の曲順が、オリジナルの「ツバメ・ノヴェレッテ」とは違っていることも注目ポイントのひとつでした。
 湯山さんが惚れ込んで、今回のオーケストラ化への呼び水となった「Preamble」には序文とか前置きという意味があることもあるのでしょう、どちらも1曲目に置かれています。それでも管弦楽版には導入部としてドビュッシーの同名曲を思わせる響きの「Umi」という3分ほどのパートが加えられていたりします。アルバムのラストは弦楽合奏とクラリネット(サンプリングでしょう)による静かなインスト作品「Lost Shoes」ですが、管弦楽版ではこれはラス前の7曲目に置かれ、壮大なフィナーレの「冬を待つうた」への導線となるのです。単なるアルバムの管弦楽への置き換えではない、新しい舞台作品なのだというコトリンゴさんと湯山さんの強い意志がそこには感じられました。
 タイトルどおりの<小曲集>だったオリジナルの「ツバメ・ノヴェレッテ」は、こうして壮大な交響的舞台芸術へと姿を変え、フィナーレではそれまでの淡い光は眩いばかりのそれに変化して舞台を照らしていたように思いました。

 これはぜひ再演を期待したくなります。聞けばすでに湯山さんは動き出されているとのこと。期待して待つことにしましょう。

杉田 元一(レコーディング・プロデューサー/ライター

会場の誰もが“ツバメ”になれた愛しい時間

 

飛騨はJ R高山駅に降り立ったのは開演間近の14時過ぎ。あたりはしんしんと雪が降り、街全体が神がかった雰囲気を醸し出していた。駅から見える今日の会場、高山市民ホールは重厚なザ・昭和テイストのモダンな建物。駅から楽器を担いだ人たちが会場に向かう。今回のコンサートが音楽関係者にとってもエポックであるのだと実感したのであった。

 

コトリンゴというアーティストの存在は映画「この世界の片隅に」の楽曲提供をしたという事くらいしか知識はなかった。今回、総合プロデュースの湯山玲子が彼女の8枚目のアルバム「ツバメ・ノヴェレッテ」のサンプル盤を聴き、インスパイアされて今回の企画に繋がったという。プロフィールを見れば大阪生まれ、そして神戸の甲陽音楽院からバークリー音楽大学へ進むという超優等生にして、デモテープを坂本龍一に認められるという、昭和のテイトウワ的なキャリアを持つ当代の才能である。いったい、そんな才能がどんな短編小説を魅せてくれるのだろうと期待が膨らむ。

 

第一部は鈴木織衛率いる「オーケストラ・アンサンブル金沢」による演奏。今までまったく聴いたことのない楽曲が並ぶ。「カプリコーン協奏曲 作品21」古典のテイストの上に、何やら不穏なまでの現代性を載せた新感覚の音圧で、一気にトランス状態に入る。ディーリアスの「春初めてのカッコウの声を聴いて」も初めての体験、湯山によれば“現代のアンビエント・ミュージックに繋がる音響”とは正に言い得て妙で、確かにイーノのアンビエントものを初めて聴いた時の不安感と共生する“心地よさ”を感じさせる楽曲。そして、ラストはお馴染みドビュッシーによる「小組曲」である。100年前の作曲家とは思わせないポップでキャッチーなメロディーでオーケストラは最高潮に盛り上げてくれた。

この第一部の選曲は、普通のオケ主導のコンサートではあり得ないラインナップであり、ここは爆クラ(爆音クラシック)を10年も続けてきた湯山の編集者魂に拍手を贈るばかりである。

 

待ちに待った第二部。真紅のドレスで現れたコトリンゴ。彼女のアルバム「ツバメ・ノヴェレッテ」全13曲から8曲が選ばれ、彼女自身によるスコアによって交響曲として生まれ変わった初演の始まりである。世界的ダンサーである首藤康之が舞台に登場して、モチーフであるツバメを表現していく。コトリンゴによるピアノ、そしてボーカル、そこに厚みを加えるオペラ歌手による「THE LEGEND」の歌唱とパフォーマンス。曲調に合わせ、首藤によるツバメが実に哀しかったり、逆に最高に楽しそうだったり、次々にツバメという概念にリアルな表情を加えていくのは圧巻。聴衆のこちら側もどんどんツバメになって大空を飛んでいるような脳内体験を楽しめた。アンコールではスタンディング・オベーションを含む熱烈な反応。子どもからお年寄りまで、皆それぞれのツバメになれた一夜になった。

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そして一部・二部を演奏した「オーケストラ・アンサンブル金沢」にもブラーヴォを盛大に贈りたい。飛騨高山という土地で、金沢で育まれたサウンドを聴けることの意味を再発見出来たのも本企画の教えてくれたこと。地域それぞれにオーケストラを!という音楽家たちの真意が理屈抜きに理解できた素晴らしい演奏だった。

 

最後に本企画を総合プロデュースした湯山玲子について。爆クラ!をずっと主催してきた彼女の音楽的知見の豊富さゆえのパンフレットの楽曲解説は、素晴らしいの一語に尽きるのだが、そこに折り紙が一枚挟まれ、ツバメの折り方の解説を同載せているところに編集者としての矜持を強く感じたのである。

イシハラマコト(編集者、MEG 関西版プロデューサー)